最も印象深い税務調査〜最終章

考えてみれば、このゴロツキ共が俺に有意義な情報をもってるわけがない。

ただ、俺を脅しにきて、俺がどこまで金を抑えているか確認するために誰かに頼まれただけだ。

私は思い直し、原則どおりこの場所からヤツラを排除することにした。出て行かないのなら俺が出ていくだけ。そう決めて、こっちは法律を並べ立て正論で攻めた。

国家公務員法法人税法に定められた守秘義務規定に基づき、この場から出ていけ。社長が立ち合いを認めてる、何が問題ある。社長に問題無くてもこっちは大問題だ。首が飛ぶ。お前の首など関係ない。公務執行妨害、威力業務妨害強要罪。国として貴方方と争うことは簡単です。出ていきなさい。ガタガタぬかすからほんとに警察に連絡してやった。すると、今日は帰ると部屋をでた。警察は直ぐに飛んできた。結局ヤツらは任意でもってかれた。その後は知らない。警察を呼ぶと後始末がめんどくさい。書類を腐るほど作ることになる。まあ、それはあとだ。さて、残った社長を落とす番だ。ただ、この時に思っていたのは、この人はダミー。真に金を動かしている人間がいる。すると、最終的にこの買い場の社長に全て被らせて終わり。そんな結末だとは予想はついていたし、実際にそうなった。事実と真実は違うということは金の世界ではよくあることだ。

社長さん、あんたの金主は誰?この多額の貸金と受け取り利息。よく見れば金も多額に借りて支払利息の額もすごいことになってる。黙ったまま、口を開かない。私が質問をぶつけ続けたら、ここに電話して直接、聴けと名刺を二枚よこした。また随分と著名な組織のNo.2。

日本名と外国名。あらあら、ヤバいヤバい。社長さんの名前出して電話しても問題ありませんか。社長はどうなるか分からないが、あんたも生意気な口はもうきけなくなるかもな。社長が勝負に出てきた。正直なところ私はちびりそうだった。今回、ここまでこじれたのは海外に送金してた口座にあるのは分かってる。

二人で顔を見合わさせながらタバコを吸ってた。私は次の一手が思い浮かばない。社長も私がほんとに電話したらヤバいことになるだろう。口が硬いのを見込まれて、この仕事をしてるんだろうから。もういいわ、電話しよう。携帯で電話しようとした瞬間。社長は待ってくれ、全部俺の金だ、俺が全部やりました。修正申告する。名刺はインチキだと破り捨てた。かぶると腹を括ったんだろ。間一髪で私もちびらなくてすんだ。

真実はどこかにあるだろうが、事実はこれなんだ。

結果的に表面上の所得隠しは簿外店舗の収益を含め数十億、支払い利息、海外送金の相手、これらが何かはお話できないという。全て損金性は否認される。しかも何らかな対価性があるのは明らか、使途秘匿金に該当する。

莫大な税額となった。

社長は修正申告書を7年分提出した。

納税資金はないはず、直ぐに局の特整行きだろう。

言葉にはしなかったが私と社長はそれぞれの立場で取引をしてたのかもしれない。

これだけの数字がでた事案である。査察に持っていかれたら全ての努力が水の泡だ。裏で査察に持って行かれないように工作はしたが、この手の輩が絡んでいる事案は検察が嫌がる。無事、書類も出来上がり、処理は終わった。

半年後、この事案は優良事案として私の顔写真付きで国税庁の発行する職員向け広報誌にて紹介された。

何も優良じゃない。トカゲの尻尾切りみたいな仕事だったんだろう。

この事案をまとめたおかげで、私の名前は売れ、あちこちの花形部署から引き合いが来た。毎日、重い鞄を持ち歩いた影響か椎間板ヘルニアで腰が立たなくなり、しばらく仕事も休んだ。

よく頑張ったなと、あちこちから声がかかったが肝心なことは闇の中に社長が持っていってしまった。協力依頼のあった地方の国税局の資料調査課もこちらから提供した情報でカッコはついたようだ。

私は何かスッキリしねえなあってのが本音だった。

この年の人事異動で、私は出世していくためのポストをひとつ手に入れた。

今、思えばくだらないことだか、とにかく他人に負けたくなかった。

さて、次のステップだ。

俺は絶対に偉くなるんだ。

嫌われてもいい、偉くなる。

それだけが頭にあった。

あの社長、元気かな?

たまに思い出す時がある。

 

(追加)

最も詳しく書いて、世の中にはこんなこともあるんだと表に出したかった部分は

やっぱり書くわけにはいかないので、最も簡潔にスッと流して書きました。

また、何度も書いていますが、こうした案件ばかりで皆んな税金を誤魔化しているとは誤解しないでください。

大部分の納税者は真面目に申告をしています。正しい申告をしていなければ信用を失うことになるからです。

課税もれ云々の報道もあります。

そのほとんどが会計処理の誤り、意図的に脱税しているわけではありません。

この点については本当にご理解ください。