最も印象深い税務調査〜第三章

今ある金と反面で押さえた損益。それを複式簿記で税務上の仕訳を切る。

パズルの六割は完成か。でも、まだまだ形にはなったとは言えない。私達に求められているのは100%以上の結果だ。さて、金銭消費貸借契約書の解明に入らなければならない。一枚一枚、契約内容を読んでみる。借主の住所は全国各地、外国の方もいるようだ。先ずは近隣からひとつひとつ潰していこう。その前に彼らは何者なのか?課税事績を確認してみる。場合によっては市区町村に照会し、回答を求めた。既に死んでる人間もいる。もう一度、利息の受取口座と思われる預金を眺める。金消の枚数と振込人の数が合わない。まいったなあ、やらかした。更に目を凝らして金の動きを見てみた。やらかした、海外送金口座に流れてるよ。やばいなあ、詰めが甘かった。

ここだけB/K行って見てくるか。

でも、そんな暇ねえしなあ。機動に頼んだら、行ってくれると言う。酒飲ましといてよかったわ。俺はとにかく、この金消に名前のある人達のところに行ってみよう。遠隔地は行けないから首都圏だけとりあえず回ろう。あとは社長と話して詰めるしかねえなあ。

早速、動き始めた。

組織の上の方からは3月までに終わらせろと、うるさく言われ始めた。

俺に勝手に押し付けた仕事なのにさ。

3月は会計年度だからというのもあるのだろう。昔から、12月と3月は節目だった。

一人一人と言ってもあっちの世界の人が出てくる可能性が大なわけで、気が重くなる。一人目に会いにいく、住所は間違いないが更地だ。二人目、古いアパートだった。本人は亡くなったらしい。奥さんと話してたが、日本語が話せないのか話さないのか分からないが、私が何を聴いても外国語で返事をするから意味が分からない。もうダメ、話しにならない。次は、素晴らしい看板が出てるじゃん。

政治団体かあ。

もう、あちらの世界は慣れてる身、こんにちは。

いかつい男達が数人、威嚇してるくる。

税務署です。〇○さんいます?

若い衆はこれでもかと、脅し文句を吐き出す。もう、ゴロツキはいいんだ、お前ら税金はちゃんと払ってるか?誰かに年間110万以上もらってたら贈与税なあ、分かる?要はこの方がいますかと聴いてる。すると、別室からそれらしい男が出てきた。私の身分証明書を見せて名刺の交換をする。ちなみに当時は自分の名刺は自腹で作っていた。

彼の手からは、あちらの社会用とこちらの社会用の2枚の名刺が手渡された。名の知れた組織、その方の名前を見て半島系の方だと直ぐに分かった。もう、こんな場所に長居しててもいいことないよな。袖口から墨をチラチラ見せる。単刀直入に切り込む。ここから、いくら借りてます。毎月、相当な利息が払われてるみたいですよね。俺の借金の額は国には関係ない。利息は払ってるが利息をもらった方が税金払ってるかなんて、こっちに関係ありますか。ごもっともな回答だが、その金額を確認したいんですよ。毎月、キャッシュ払い?振込?どっちでもいいだろう、これだけ借りて、これだけ利息を払ってるんですよ。私が押さえた内容と同じ金消と利息の計算書を出してきた。

金額は一致している。

それにしても調査先の社長が金貸までやって手広く金儲けできるほどの人物には見えなかったので、目の前の方に、どういうご関係で社長さんとお知り合いに?

昔から世話になっててね、それだけですよ。肝心なことは言わず、つじつまは合わせる。よく考えればおかしなはなしだ。俺が今、調査してる法人を一枚噛ませることで、一種のマネロン?何か起きれば、被らせるこもできる。裏で絵図描いて、実際に金動かしてるヤツがいる。

他にも反面にいったが、出てくるのは、話して分かる相手はまずいなかった。

あちらの世界の方みたい人達が表面上出てくるだけ。真実を知ってる者は誰一人出てきやしない。もうやめ、こんなことしても時間の無駄。社長に聴こう。

真実は喋らないだろうが、覚悟は決めてるはず。あれだけ、あっちの世界の人達に俺が会いにいった話しはもう耳に入ってるはずだ。

連携依頼をしてきた地方の資料調査課に連絡し今まで経緯を説明。情報は全てくれてやった。しかし、国税局というところは、税務署には情報を一切くれない。

分からない取引は署に解明させる。

汚ねえ連中だ。

機動からも海外送金口座の資料をもらい、こちらの絵図をもう一度描く。

銀行も全て、把握したろう。

相手が最も知られたくない金の流れも押さえたと思う。この金の流れは正直なところ、私自身も知りたいとも思わなかった。もし、こっちの想定どおりの金なら、誰か消えてもおかしくない金だ。

もう、嘘でもいいから社長さん、うたってくれ。

社長さん、署に来てくれませんか。

聴きたいことが山ほどあります。

社長も言いたいことあるでしょ?

ある程度、目鼻つけましょうよ。

わかりました、来週なら行けます。

来週でいいですよ、待ってます。

間違いなく、モヤモヤした内容で終わる事案だろう。ただ、表ヅラは凄え事案になる。

査察に持っていかれると今までの努力が水の泡になるので、そこは上手くやらなきゃなあ。でも、あちらの世界が絡んでる事案は検察がやりたがらないから、大丈夫だろうと、査察出身の上の方から根回しだけは、してもらっていた。

さあ、社長さんは何ていうかな、来週のお楽しみかあ、腰が痛えし左足が慢性的に痺れてる。嫌だ嫌だ。

(つづく)