最も印象深い税務調査〜第二章

怒涛の銀行調査周りが始まった。借り上げた通帳の中身を分析し確認事項を整理して出発。支店長いますか。銀行のシャッターが開くのを待ち開くと同時に入る。いつもなら支店長代理なんて肩書きの行員が出てくると、支店長出せと言ったろ。お前は呼んでない。なんて怒鳴り散らすところだが、今回は20行以上の銀行を回らなければならない。そんことにこだわっていたら時間がなくなる。もう誰でもよかった。印鑑票、CIF、全店照会。これ頼むといきなり要件から入る。コムで預金の復元。100万以上の入出金に絞り金の動きをトレースし、今度は入出金伝票をめくる。出金伝票では金が別の銀行口座に流れてないから確認する。入金伝票はこの金がどこから来たか確認する。テラ番や時間も見落とさないように慎重かつ速やかに青伝と赤伝をめくるのである。しかし、そう簡単にはかねの流れは繋がらない。こんなことを三週間続けた。金は動いてるが、キャッシュで抜けて行方不明。溜まりはない。三週間も銀行ばかり行ってたら頭の中はおかしくなりそうだった。銀行から署に戻り復元した預金を見やすく整理する。金の動きをトレースした表に情報を書き込んでいく。毎日、これの連続。くたくたに疲れてた。いつでも、どこの銀行に飛べるようにカバンの中は資料でいっぱい、多分25キロくらいの重さはあったと思う。腰が痛くて痛くてたまらなかった。

ある銀行に臨場し、いつもと同じ作業をしていたら、金額は小さかったが未把握の銀行口座に送金してる事実を把握した。送金先は大手町や霞ヶ関あたりの銀行だったと記憶してる。他にも送金先はないか伝票をめくる。これだけだ。ここは引き払って、送金先に行ってみるかと痛い腰を上げて地下鉄に乗った。どでかい銀行の営業本部。これだけでかい銀行だと、調査対象者、目的など簡単に説明して国税当局と銀行協会で取り決めた書類を見せれば、直ぐにどうぞどうぞと歓迎してくる。たかが地方の会社の預金だ、ヤツら行員には屁みたいなもの。それが今日はなんだかんだ屁理屈こねて俺に帰れと言う。まさか、こんな場所で怒鳴り散らすことになるとは予想もしていなかった。外国籍と思われるお客さんも、強盗でも来たのか遠回しに見ている。ここからなら国税局も徒歩5分だ、局長に説明してもらおうか、この度の調査拒否理由について。1時間ぐらい経った頃、相手が降りた。仕事に取り掛かる。まずは預金の復元からだ。7年分の復元が終わった段階で、なんだこの口座、ヤバイくらい金入ってんじゃん。簿外店舗の金だ。どこからの金だ?今は破綻してしまったが、ある信用組合から入金になっている。この信用組合の名前を見て、ここも行かなきゃだめなのは分かるが、正直なところ絶対に行きたくねえ。気分はどん底だ。出金伝票もみる。数億円の定期預金、訳の分からない個人への送金。

海外送金もある。なにこれ?あまりにも量が多く、その日だけで仕事は終わらず翌日も臨場することにし、署に戻った。

溜まりもみつけた、個人への送金は例の金消の関係だろう。地方の国税局が調査してるパチンコ屋に流れてる金もみつけた。簿外店舗で得た収入の一部から地方のパチンコ屋にみかじめ料の支払い原資として送金してたとおもわれる。

分からないのは海外送金だ。ヨーロッパの企業に送金する理由があるの?

買い場だよ、この会社。

海外の民間調査会社と国税庁は契約をしているので、こいつを使い、この会社を調べてみることにした。その回答が来るまでに、あの信用組合に入らなきゃ。気が重くなる。

臨場。予想通りの展開だ。

思わず、Can you speak Japaneseなんて言っちゃったもんな。

何とか話しつけて、作業を進めた。

いちいち消耗するほど、すんなりはいかなかったが、私の欲しい資料は全て手に入れた。その中にはヨーロッパの法人に関するものもでてきた。

集めた資料を整理して6割ほどの絵図が完成し、少し先が見えてきた頃である。

海外調査会社から回答が届いた。

割と早いねえ、なんて思って辞書を片手に読んでみた。要は実態は何してる法人かは不明。

Possibly a North .......... company

この一行で先は長いことを知らされたのである。

(つづく)